モバイルアプリの利用実態とアプリマーケティングを考える第 6 回 : アプリマーケティングに関する企業の取組み事例

これまで 5 回にわたり、アプリの利用実態について様々な角度からデータを検証しつつ、傾向を分析してきました。最終回では、これまで見てきた動向を踏まえ、企業がどのような形でアプリのマーケティングを実施し、生活者に対しインストールと継続的な利用を促しているのかを具体的な事例から探っていきます。

以下のエン・ジャパン株式会社と mixi の事例からは、アプリにおける施策を成果につなげるための重要なヒントが浮かび上がってきます。

事例 1 : 求人求職情報サイトを提供するエン ・ ジャパン株式会社のアプリプロモーション

日本最大級の転職サイト 「 エン転職 」 は、従来からメインターゲット である 20 代の若い層に向けてモバイルでのプロモーションに力を入れてきましたが、さらなる新規潜在転職者層の獲得と、すでに登録している既存顧客とのエンゲージメントを深めるため、 2015 年夏に転職アプリ 「 エン転職 」 を企画 ・ 開発しました。

上記のアプリの目的を実現するには、まずより多くのインストールを促さなければなりません。転職に興味がある人から真剣に転職を考えているユーザーまで、幅広い層にアプローチすると同時に、対象ユーザーがモバイルに接触している際に起こるMicro-Momentsをくまなく捉えるために、ユニバーサル アプリ キャンペーン ( 以下、UAC ) を利用したアプリキャンペーンを実施しました。UAC 経由のインストールが増えるに従い、全体の有償インストール数 ( Android ) に占める割合が増加し、最終的には約 70% まで拡大、また CPI ( Cost Per Install :アプリをインストールし起動されるまでの獲得単価 ) は 35.3% 低減しました。

エン ・ ジャパン株式会社デジタルプロダクト開発本部プロモーション部部長の田中氏は 「UAC で特に評価できる点は、アプリをインストールしたユーザーが求人応募に至る転換率が高いこと。UAC 導入後にアプリプロモーションの指標を CPI から ROAS ( Return On Advertising Spend:投資した広告費用の回収率 ) にシフトしていますが、半年が経過した今も高い成果を出しています。リアルタイムでの膨大なデータ処理と最適化を Google のシステムに委ねることで、マーケターは戦略策定やクリエイティブ改善に集中できる。専門に特化した役割分担によって、高い成果を出せる施策です 」 と、UAC 経由でインストールを促したユーザーが、まさにエン ・ ジャパンがターゲットとすべき転職に興味のあるユーザーであったこと、そして最新のソリューションを活用することの重要性と効果を示唆しています。

事例 2 : mixi「 モンスターストライク 」 におけるリエンゲージメント戦略と LTV が高いターゲットに絞ったアプリプロモーション

全世界で 3,000 万人以上のユーザーを有する人気ゲーム 「 モンスターストライク 」 は、スマートフォンゲーム市場の競争が激化する中で、ゲームの価値を更に高めるために 2 つの課題を設定しました。

1) いかに既存のユーザーに遊び続けてもらうか、 2) いかに将来的な LTV ( Life Time Value ) が高い新規ユーザーを獲得するか、の 2 点です。これらを解決すべく、実験的な取り組みも含め以下の 2 つのアクションを実施しました。

  1. 既存のユーザーに遊び続けてもらうためのリエンゲージメント施策
  2. LTV が高い ( であろう ) ユーザーをターゲットとしたインストール施策 ( 実験 ・ 検証 )

リエンゲージメント施策

mixi エックスフラッグスタジオでは、デイリーベースで休眠ユーザーの復帰率を計測しており、 7 日以上休眠したユーザーはゲーム復帰率が低くなることが判明していました。そこで 7 日以上の休眠ユーザーをターゲットに絞って広告訴求を行い、ユーザーが再度ゲームで遊んでくれた場合は新規での獲得と同様に評価することにしたのです。適切なメッセージでゲームへの興味を再度喚起するために、これまでのゲーム利用状況や課金経験の有無によってユーザーをセグメント化しました。そして各セグメントに異なったメッセージやイメージ画像でバナーを作成 ( 下図参照 ) 、 7 日以上休眠したユーザーへ配信したのです。

休眠ユーザー向けリエンゲージメントバナー

さらにディープリンク形式の広告フォーマットを利用して、すでにアプリをインストールしているユーザーが広告をクリックした場合、Google Play / App Store に遷移せず、自動的にゲームが起動するようにしました。 広告配信のターゲットとなるユーザーのリストについてはサーバー間でデータベース連携し、毎日更新するシステムを自社で開発、常に最新のリストに適切な広告訴求を行うことができる環境を実現しました。これにより、休眠ユーザーは 30 日間で 100 % 以上の ROAS を記録し、30 日後のリテンションコストは新規インストールユーザー向け施策に比べ 1/10 と、ユーザーに再度ゲームで遊んでもらうという目的を効率的に達成することができました。

30 日後のリテンションコスト

LTV が高いユーザーをターゲットとしたインストール施策

次に、ユニバーサルアプリキャンペーン ( UAC ) の新機能としてリリースされた 「 アプリ内コンバージョンを促進する最適化オプション 」 をいち早く実験的に導入し、ライフタイムバリュー ( LTV ) の高いユーザーのアプリインストール数の最大化を目指しました。LTV の高いユーザー層を見つけるための配信ターゲットとして、 「 課金したユーザー 」 と 「 チュートリアル後に最初のイベントをクリアしたユーザー 」 の 2 パターンで実施したところ、UAC の新機能によって獲得した 「 チュートリアル後に最初のイベントをクリアしたユーザー 」 が最も効果が高く、既存 UAC によって獲得したインストールユーザーに比べ 236% も高い ROAS を実現することができました。UAC の新機能を導入することで、LTV の高いユーザー層をより多く取り込むことに成功した好例です。

既存 UAC と 新機能の ROAS 比較

まとめ

いずれの事例も、 UAC や UACのアプリ内コンバージョンを促進する最適化オプションなど最新のツールをタイムリーに導入することで、実験的な取組みをスピーディーに実施 ・ 検証しています。なお、UAC に関しては Google AdWords 学習資料にて UAC の活用のための 10 のチェックリスト を公開しています。こちらも御覧ください。

第 1 回から第 5 回で見てきたように、刻々と変化するユーザーのニーズをリアルタイムで捉えることは非常に重要です。ユーザー動向の変化を見逃すことなく、アプリの事業価値を高めていくには、最新データに基づいた自社のアプリ開発 ・ マーケティングの刷新、アプリ利用実態の迅速な把握、各種プロモーションの効果測定が欠かせません。その上で、正確なメジャメントをベースとした素早い収益化とさらなる開発に向けた事業展開が求められます。

参考リンク

Google AdWords 公式ブログ

Google Adwords 公式 YouTube チャンネル

Google AdWords 学習資料

緑川 徹生

パフォーマンス ソリューション エキスパート、モバイルアプリリード

Think with Google 日本 ニュースレター

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